論文掲載「根本的なライフスタイル転換のプロセスの解明 と転換学習プログラムへの示唆」

科学研究費「根本的なライフスタイル転換のための「自己の成長」プロセスの解明に関する研究」により実施しています。その一環で、「環境教育」30 巻 3 号(2021年7月)に、インタビュー調査の結果をまとめた論文が掲載されています。

【論文要旨】
 気候変動等の危機が深刻し、本格的な対策が必要となっているなか、持続可能な社会に向けたライフスタイル転換が必要である。本研究では、ライフスタイル転換を支援する転換学習プログラムの開発に資することを目的として、ライフスタイル転換における意識と行動の転換のプロセス、さらに各プロセスを規定する要因を明らかにした。

 転換学習プログラムを検討するうえで、特に重要な研究結果は次の4点である。

 第1に、意識の転換には、「社会の問題への気づきによる価値規範の転換」と「生き方の選択肢への気づきによる視座の転換」という異なるタイプのものがある。各タイプに応じた転換の支援を考える必要がある。

 第2に、意識の転換が行動の転換に結びつくとは限らず、行動の転換を実現させる要因があるが、特に転換を阻害する要因を解消する4つのタイプの人(ロールモデル、ナビゲーター、パートナー、サポーター)の存在が重要である。

 第3に、意識・行動の転換には、それが短期間に起こる場合と長期間にわたって漸進的に起こる場合がある。行き詰まりを長く抱えながら、行動転換に至らない場合には、外部の研修等での技能の獲得やそれを通じたネットワークの形成が行動の転換の準備となる。

 第4に、意識の転換→行動の転換という経路だけでなく、行動の転換→意識の転換という経路がある。この場合の行動は、期間が限定された一時的な行動であるが、このお試しの行動による意識の転換が生じ、行動の本格化へと進む場合がある。

Key words: 持続可能な社会, ライフスタイル転換, 転換学習, 半構造化インタビュー調査

白井信雄研究室

武蔵野大学工学部サステナビリティ学科/環境システム学科における「持続可能な地域づくり、環境政策、サステナビリティ学」をテーマにした研究室です。研究、教育、社会活動の様子を記録、発信していきます。